ベルジスク 7
すると、その狼の顔面を貫通して白い筋が走ります。
それは遠距離から機会を窺っていたクラッシュの矢。
「計算どおり。やはり、魔物は前に出ようとするばかりです」
そう言って、番えていた矢を放し、瞬間的に矢は狼の顔面へと飛びました。
僕は距離的にも時間的にも間に合わないことを悟ります。
しかし、僕の白い筋が走り、矢の軌道上に向かいました。
同時に、身体の感情と魔力が昂(たか)ぶるのを感じます。
「殺すなああぁぁぁぁ!」
声を張り上げ、その瞬間に飛んでいる矢が止まっているように見えました。
僕が白い筋をたどる間は回りの空間だけが止まっていたのです。
しかし、その筋をたどり終えた瞬間。
ザクゥ、
「なっ!?」
狼の目の前には矢先が迫り、すでにその矢は僕の肩を射ていました。
僕自身呼吸は急激に苦しくなり、体から力が抜け、倒れてしまいます。
肩に力が入らなくなり、デフォルが駆けつけてきました。
「カオリ……魔力」
流れ出ていく急激な魔力より多く、デフォルの魔力が送り込まれてきました。
この尋常(じんじょう)ではない回復力を初めて味わい、矢を自分で引き抜き、光に変えます。
それにしても、あまりにも優遇されると少し気がおかしくなりそうでした。
そして、脳がしびれてしまい、肩にも力が入らない今、それでも僕はすぐに起き上がって目を閉じました。
少なくとも痛がってはいけません。
「どうして無茶をなさるのです! カオリ様!」
真っ先に心配をしてくれたのがシャウトです。
そして、狼も僕の行動の意味を理解してくれたのか、わきの下に頭を入れ、人間で言う肩を貸してくれるようでした。
その行動に対して驚きと警戒を見せるファイターに僕は手をかざすことで落ち着かせます。
「言っておくけど、今回の任務は洞窟の探索だったでしょ?
それでここまできたけど、この狼を倒す意味はないよ」
「し、しかし、これほどの魔物はいずれ街に対して脅威になると……」
シャウトが僕に言います。
少し落ち着きを失ったままうろたえている姿も悪くはありません。
「そうかもしれない。
けど、君達にはこの狼の声が全く聞こえていなかったから仕方ないか」
「声? 魔物に声などありません。
隊長、目を覚ましてください」
「そもそも今日はまだ夢を見ていないよ。
クラッシュ……君なら分かるな?」
僕はクラッシュに訊ねます。
すると、彼女はうなずきました。
「ええ。兼ねてより魔物の声は主にガーダーが聞くという情報を聞いてはいましたが、隊長も常にデフォルの魔力と混合している様子を見ると、可能性は否定できません」
「物分りがよくて結構。
そういうわけで、今日の任務はこれまで。
この狼達もこれ以上の戦いを望まないし、後はフラート……はいなかった―――」
僕の体はわきの下にいた狼から落ちてしまいました。
普段から体を鍛えていない分。
ダメージを受けたときの魔力の放出量が激しいのです。
デフォルの回復は心地よくなり、そのまま深い眠りへといざなってくれたのでした。
〔つづく〕
登場人物
草薙 香 主人公
フラート 館で暮らす香を悩ますハイテンションファイター
デフォル うねうね大根から進化した少女
シャウト ファイターの館のリーダー
クラッシュ 知的派ファイター、本に囲まれて生活している
チャート オーバーリアクションが特徴
レイチェス いきなり喧嘩を始める 大剣使い
ファールウ いきなり喧嘩を始める レイピア(小剣)使い
ベルジスク 洞窟狼 オス
ベルジスク 洞窟狼 メス
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